Torus Engineering in Practice

実践トーラスエンジニアリング

「理論はいい。コピペをくれ。」

エンジニア向け実践ガイド——本編を読まずに導入するための公式ドキュメント

TL;DR ループを2本持て。1本目はいつもの仕事のループ(すでに持っている)。2本目は「仕事のやり方」を定期的に見直すループ(カレンダーに入れろ)。2本が独立に回っていれば、直積は勝手に成立する。以上。ここまで読んだ時点で、導入はほぼ完了しています。

§1クイックスタート(3分)1

  1. 実行ループを確認する。 すでにある。CI を直し、Issue を処理し、PR を出す——あなたが毎日回しているあれが第1の円環(子午線)である。追加作業:なし。
  2. 改善ループを設置する。 繰り返しの予定を1つ作る。件名は「エージェントの運用を見直す会(30分)」。これで第2の円環(経線)が手に入る。気合や反省の心ではなく、カレンダー上の予定であることが位相的に重要である。
  3. 直積を取る。 何もしなくてよい。2本のループが独立に回ってさえいれば、直積 S1 × S1 は自動的に成立する。この工程は位相幾何学が担当するため、依存パッケージの追加は不要。

導入は以上です。ここから先は、動き始めてから読む部分です。

§2コピペ用ファイル

結論だけ知りたい方のために、そのまま貼れるファイルを2つ用意した。1つ目は CLAUDE.md への追記、2つ目は経線を回すワークフローである。プロジェクトの事情に合わせて数値を変えてよいが、構造(ループが2本で、互いに独立)だけは変えないこと。

CLAUDE.md(末尾に追記)
## トーラス運用規約(Torus Operating Rules)

### 実行ループ(子午線)
- CI が赤ければ直す。Issue が来たら処理する。PR を出したら見届ける。
- 1 周ごとに `.torus/revolutions` の数値を 1 増やす。

### 改善ループ(経線)
- `.torus/revolutions` が 100 の倍数になったら、実行ループの仕事を直すのを
  いったんやめ、実行ループ**そのもの**を直す:
  1. 直近 100 周の失敗パターンを 3 つ挙げる
  2. この CLAUDE.md を 1 箇所以上改訂する
  3. 使われていない Skill を 1 つ削除する(供養は任意)
- 改善ループの中で改善ループを改善しないこと
  (種数 2 は次のメジャーバージョンで対応予定)。

### 禁止事項
- 穴を埋めない。すべてを自動化した瞬間、トーラスは球面に退化し、
  第 4 世代に戻る(本編 §4)。人間の判断が通る空洞を必ず 1 つ残すこと。
.github/workflows/improvement-loop.yml
# 経線方向の円環。子午線(いつもの CI)とは独立に回る。
name: improvement-loop
on:
  schedule:
    - cron: "0 9 * * 1"   # 周期比はここで調整する(表 1 参照)
  workflow_dispatch:        # 人間の判断が通る穴。塞がないこと。
jobs:
  wind:
    runs-on: ubuntu-latest
    steps:
      - uses: actions/checkout@v4
      - name: 実行ループそのものを見直す
        run: |
          echo "直近の失敗パターンを集計し、CLAUDE.md の改訂 PR を作る"
          # ここにお好みのエージェント CLI を置く。守るべき点は 1 つ:
          # このジョブはプロダクトコードに触らない。触った瞬間それは
          # 実行ループであり、経線は子午線に潰れて種数が 0 になる。

§3周期比の選び方(早見表)

周期比(実行ループ何周につき改善ループ1周か)は、トーラスエンジニアリング唯一のチューニングパラメータである。迷ったら 100 : 1 でよい。

表 1. 周期比の推奨値。
周期比通称用途
10 : 1アグレッシブ立ち上げ期。まだ何も分かっていない頃。
100 : 1標準迷ったらこれ。本稿の推奨デフォルト。
1000 : 1エンタープライズ改善に稟議が必要な組織向け。
1 : 1対角線1周ごとに振り返る。振り返りしか進まない。非推奨。
n : 0第4世代改善ループが存在しない。それはただのループです。
φ : 1黄金比軌道がトーラスを稠密に埋める。いつかすべてが改善されるが、いつとは言っていない。

§4トラブルシューティング

表 2. よくある症状と位相的診断。
症状位相的診断対処
改善ループを最後に回した記憶がない球面への退化(種数 0)ドーナツを1つ食べ、穴の存在意義を思い出してから §1 の手順 2 に戻る。
振り返りばかりで仕事が進まない巻き数 (0, n) の軌道周期比の分子と分母が逆。入れ替える。
ワークフロー図がスパゲッティ化した台となる空間(平面)の失敗あなたのせいではない。種数を上げる(本編 系 3.2)。
セッションが途中で切れた正常周期境界条件により、右端から出たものは左端から戻る。位相的には何も失われていない。
Dev と Ops の区別がつかなくなったクラインの壺化の初期症状仕様です。おめでとうございます(付録 A)。
サブエージェントがサブエージェントを起動し始めたフラクタル化の初期症状止めてはいけない。自己相似性の発露です(姉妹編)。

§5導入チェックリスト

6項目中4項目にチェックが入れば、あなたのシステムは位相的にトーラスです。残りの2項目は、次に経線を一周するときに改善されます。それがこの手法の良いところです。

§6用語対訳表

本編の著者らと会話する必要が生じた場合に備え、対訳を示す。

表 3. 論文用語 → エンジニア語。
本編の用語エンジニア語訳
子午線方向の円環いつもの仕事のループ
経線方向の円環定例の振り返り
周期比 (winding ratio)何周ごとに振り返るか
種数 (genus)穴の数。意訳すると「人間の居場所の数」
稠密な軌道バックログは全部やる(期日未定)
球面への退化全自動化してしまい、誰も見ていない状態

§7よくある質問(実務編)

本編を読む必要はありますか?
ありません。そのためにこのページがあります。ただしトーラス上では「読んでいない」という状態も周回すればいずれ「読んだ」に戻ってきます。
コピペしただけで動きますか?
コピペした時点であなたは実行ループを1周しています。すでに動いています。
上司にはどう説明すれば?
「ループとグラフの直積です」で通らなければ、「導入コストはドーナツ1個分です」(本編 §5)が通ります。

1 「3分」は位相的な見積もりであり、連続変形により任意の長さになりうる。 ↩